前回のコラムでは仕事の段取りを効率よくするために「コミュニケーションを大切に取り組む」という観点についてふれておりました。
コミュニケーションは当サイトでお伝えするテーマのひとつでもあります。
今回はコミュニケーション能力をテーマに、コミュニケーション能力が仕事や職場で求められる理由や重要性、コミュニケーション能力が高い人の特徴や高め方などについてわかりやすく解説いたします。また実際にコミュニケーション能力を仕事の現場で活かす場面についてもご紹介いたします。
コミュニケーション脳力を高める方法もご紹介しておりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
コミュニケーション能力とは?
コミュニケーション能力とは、互いの考えや意見を円滑に伝えあうための能力で、職場や仕事上の対人関係において重要とされる能力のひとつです。
社会生活において自分以外の存在=他者との関係は欠かせない要素であり、職場に限らず必要なスキルでもあります。
コミュニケーションの語源はラテン語の「communis(コミュニス)」に由来しております。コミュニスは「共有」や「共通」を意味しており、そもそもは他者との情報共有や意思疎通のことを指しております。
コミュニケーション能力で求められる力について
ではコミュニケーション能力の「力」へフォーカスしてみましょう。
どのような力が求められているのでしょうか。
まずは次の3つの観点を抑えておくと良いでしょう。
相手を理解し適切に伝える力
コミュニケーションは双方向である必要があります。
他者となる相手と自分は、育った環境や価値観は当然ながら異なっております。
その違いを前提におき、相手の意見を受け取り理解することが重要です。
その上で、相手にわかるように自分の考えや意見を伝える必要があります。
伝える際には、その時の場面であったり状況によって、言葉を選んだり、話し方を意識する必要もあります。
時には例え話を交えたり、表現を変えてみたり、相手に適切に伝えるための工夫が求められます。
論理的に伝える力
論理的に伝えるポイントは、思考法やプレゼンテーションのテーマでも詳しくお伝えしていく予定ですので、ここではポイントとなる部分を解説いたします。
論理的な伝え方のポイントは、「結論」と「理由」、そして、その「つながり」です。
この要素が不足していたり、欠けていると論理的な伝え方とはいえません。
うまく相手に伝わらない、という場合はこの3つの要素のいずれかが足りていないことがほとんどです。
論理的な伝え方のポイントとして、「結論」「理由」「結論と理由のつながり」という3つの要素を押さえておくようにしましょう。
周囲や他人を巻き込み協力を得るための力
仕事で良い成果をあげるためには、周囲の協力は欠かせません。
自分ひとりでは、考え方にもやれる事にも限界があります。
周囲を巻き込み協力を得ることは、ビジネススキルにおいて重要なポイントとなります。
コミュニケーション能力が求められるのは、他者を自分の力にすることで大きな成果につなげられるためである、とも言えます。
仕事におけるコミュニケーション能力の重要性
次に、実際に仕事の場面でコミュニケーション能力が重要視される点をご紹介いたします。
他者との信頼関係
仕事やビジネスは少なからず他人との人間関係のうえで成り立っています。社内では同じ部署のメンバーや関連する事業部、上司や同僚など様々な人間関係がございます。外部の企業でも商品を仕入れたり、一部の業務を委託していたり、パートナーとなる企業との人間関係もございます。
人間関係が前提にある以上、他者と信頼関係というのは重要な要素となります。
信頼関係を築けている方が円滑に仕事を進められたり、商談の成約率が高まったりとより良い成果へつなげやすくなります。
組織の活性化
またコミュニケーション能力が高い人が集まる組織は、雰囲気も良くなりますし、目標へ向かうエネルギーもあふれた状態であることが多いです。
業務を行う個人のパフォーマンスも結果として向上していくことでしょう。
コミュニケーション能力は組織を活性化させる為にも大切な役割を果たしております。
質の高い情報共有
ナレッジを共有することができれば組織全体のスキル向上につながります。
業務が属人化せず効率よく仕事をまわせるチームづくりに貢献することができるでしょう。
情報共有の質を高めるには、組織に属する個人の意識は欠かせない要素です。
普段からコミュニケーションを高め合っていることで、組織へ属している自覚や意識も高まり、円滑な情報共有を実現させることができます。
コミュニケーション能力が高い人の特徴
ビジネスの場面でコミュニケーション能力が求められる理由や重要性について解説いたしました。
ではここで、コミュニケーション能力が高いといわれる人にはどのような特徴があるのか確認してみましょう。
聞き上手
聞き上手な人はコミュニケーション能力が高いことが多いです。
コミュニケーションは相手への理解からはじまりますので、聞く力というのは円滑なコミュニケーションには欠かせないビジネススキルです。
聞く力を高め聞き上手になるには、相手が伝えたいことへ最後までしっかりと傾聴する姿勢をもつことが大切です。
相手の話を遮ってまで自身の意見を強調したり、相手の言葉をすぐに否定するのではなく、相手のこと・相手の意見をまずは理解する姿勢や態度が重要となります。
結論が先
自身の考えをわかりやすく伝えるポイントは「結論を先に言う」ということです。
結論を先に明確にして話す人は、相手に合わせた話し方も実現できていることが多く、コミュニケーション能力が高いといえます。
ダラダラとまとまりの無い話が続いていては、お互いの理解度がうまく高まりません。
結論は先に、という点を心がけましょう。
コミュニケーションの種類
コミュニケーションの種類を分類するのであれば、「言語によるもの」と「非言語によるもの」へ分けることができます。
コミュニケーションの「言語」と「非言語」について確認してみましょう。
言語によるコミュニケーション
言語によるコミュニケーションとは、自分の考えや知識、価値観などの情報を言葉で伝える手段をいいます。
ここには手話などの手段も含まれます。
非言語によるコミュニケーション
非言語によるコミュニケーションとは、実際の話の部分以外で発せられている情報を指し、身ぶりや手ぶり、表情や声のトーンなどが含まれます。ノンバーバルコミュニケーション(言葉によらない、コミュニケーション)とも呼ばれます。
相手の感情であったり本心など言葉では表現されていない隠れた要素を読み解くには、仕草や表情、声のトーンなど非言語によるコミュニケーションから推測することが大切となります。
聞く側であれば、相手の方へ身体を向けたり、手季節なタイミングでうなづいたりするのも大切なコミュニケーション要素です。
伝える側であれば、効果的なボディランゲージやジェスチャーを入れたり、その時々にあった服装へ気をつかうということも大切な要素とされます。
コミュニケーションにおけるよくある誤解
コミュニケーションが高い人、低い人というテーマで話をする際に、よくありがちな誤解について解説いたします。
外交的な人はコミュニケーション力が高い?
外交的で他者と積極的に関係をもとうとしたり、会話をしようとしたりする人がいます。
さて、このような外交的な人はコミュニケーション力が高いでしょうか。
もちろん、外交的な人の中に高い人も多くいますが、必ずしも高いというわけではございません。
コミュニケーションとは、双方向の関係で成立するのが特徴です。
自分自身の意見ばかりで相手からの話や意見へ傾聴できなければ、一方通行となりますのでコミュニケーション能力が高いとはいえません。
無口な人はコミュニケーション力が低い?
では逆に、無口な人や内向的な人はどうでしょうか。
この場合も、必ずしもコミュニケーション能力が低いということはございません。
無口であっても、相手の意見を正しく理解をして、適切な返答を少ない言葉でもしっかりと伝える方もいます。
また無口な人には、相手を気遣うからこそ、自分の意見や話を抑えて相手を理解しようとしている心理が働いていることも多いです。
このような人は無口であってもコミュニケーション能力は高い人であるといえます。
コミュニケーション能力を高める方法
コミュニケーション能力が仕事やビジネスで重要という点とその特徴について解説いたしました。
では、ビジネスにおいて重要なコミュニケーション脳力はどのように高めていけば良いのでしょうか。
本記事をご覧いただく方の中には、研修でコミュニケーションを題材にしている方、新卒で社会でのコミュニケーションの在り方について事前に調べている方、転職先でのコミュニケーションを潤滑にしたい方、など様々かと思います。
どのような方にも共通でご案内できますのは、コミュニケーション能力は分解すると大きく、「伝える力」と「受け取る力」に分けることができる、ということです。
分けることで、どちらの能力を高めるべきか、それぞれの能力の高め方、などが明確になり、効率よくコミュニケーション能力を鍛えていくことが可能となります。
それぞれ詳しく解説してみましょう。
伝える力を高める
まずは伝える力です。
「論理的に伝える」「結論を先にする」などについて上述しておりましたが、自分の意見や考えを相手へ明確に、そして的確に伝える能力がコミュニケーションにおいて求められる「伝える力」です。
自分なりに伝えても、「何を言いたいかわからない」「結論は何?」と、指摘されるような方は以下を意識してみると良いでしょう。
例文も記載しますのでご参照ください。
・「結論」と要点を述べる:□□を○○にする件(要点)についての相談(結論)です。
・「理由」を述べる:なぜならば△△であるためです。
・「具体例」で補足する:例えば、××でも△△と同じ事象が起きています。
・あらためて「結論」を整理する:つきましては、△△の解決のため□□を○○することを提案いたします。
なお上述でご紹介した手法を「結論(Point)」「理由(Reason)」「具体例(Example)」「結論(Point)の繰り返し」の英単語の頭文字から「PREP法」といいます。]
PREP法は、自身の意見や話への説得力を高めることができます。
特に、短時間で自分の意見を伝えなければならない場面などで活用いただけます。
PREP法をはじめ、論理的に伝える技術は当サイトで別途詳しくご紹介したいと思います。
受け取る力を高める
受け取る力を高めるためには、まずは、相手の話へしっかりと耳を傾けることが大切です。
相手がなぜ、その話をしているのか、その時の感情やその人の背景や前提にあるものは何か、相手の立場にたって耳を傾ける姿勢が受け取る力を高めることへつながります。
そこで活用したい手法が「バックトラッキング」です。
バックトラッキングとは、カウンセラーやセラピストでも活用されている技法で、相手とのコミュニケーションを潤滑にする手法です。
相手からの信頼感を得やすく、相手の話を促していく、という効果がございます。
方法は、「相手の話や感情を繰り返す」ことや「相手の話を要約する」ということです。
相手の話を要約するのは少し技術がいる作業ですが、コミュニケーション能力を高めたいという方へは、オウム返しのように相手の話を繰り返すことや、相手の感情に寄り添って繰り返してみる、ということからでも始めてみることをおすすめいたします。
仕事の現場でのコミュニケーション力の活かし方
それでは具体的な仕事の現場に合わせてコミュニケーション能力を活かす場面についてまとめてみましょう。
営業
コミュニケーション能力を活かす現場でわかりやすいのは営業職でしょう。
営業はお客様との信頼関係のもと、商談を成功に導き顧客を獲得し、継続して利用いただくための取り組みが求められます。
その為にはお客様の求めるニーズを読み取り、自社の製品やサービスの魅力を正確に伝えていく力が大切です。いわゆるコミュニケーション能力で求められる力の中でも「相手を理解し適切に伝える力」や「論理的に伝える力」が必要となります。
また予期せぬトラブルなどによるクレームへ対応しなければならないこともあるでしょう。このような時に、トラブルの原因を正しく見極め、お客様の気持ちに寄り添って柔軟に対応することができれば、信頼関係の修復も早まります。ここでもコミュニケーション能力が活かされます。
私自身、営業の経験においてお客様と会話する際に優先してましたのは、「相手の課題やニーズを正しく掴む」ということです。お客様が欲しいのは商品や機能といったもの(手段)ではなく、それによって充足されたり課題が解決したりすること(目的)にあります。どのような課題を解決したいのか、どのようなニーズを求めているのか、正しく押さえることで商談の成約率は各段に向上します。その為にもコミュニケーション能力を活かし、相手を理解することを意識してみると良いでしょう。
接客
接客に従事する方もコミュニケーション能力が求められます。
例えば、飲食店のホール係やアパレルショップのスタッフなどをイメージいただければと思います。
飲食店やアパレルショップにコミュニケーション能力の高いスタッフがいると、そのお店の居心地の良さも変わり購買意欲やリピートにもつながります。接客を通じた会話の質の向上にコミュニケーション能力を活かすことができます。
また、お客様と接する機会の多い接客では、会話のみでなく立ち振る舞いといった非言語によるコミュニケーション能力も大切です。好感度の高いスタッフの特徴は、常にお客様への目配り気配りができており、言葉数は少なくともお客様の状況を的確に把握しているものです。
会議
仕事の現場でコミュニケーション力を活かすのは、お客様と向き合う時間のみではなく、社内での会議や打ち合わせにおいても活かすことができます。
ファシリテーターとして参加者の意見を引き出したりまとめたりする力は高いコミュニケーション力が土台となります。
自身の意見を発言する際にも、コミュニケーション力を活かすことで、対峙する意見との相違点や相手の考えをしっかり汲み取りながら、論理的に自分の考えを伝えていくことができます。
コミュニケーション能力を高めるための教育
文部科学省の動き
教育や科学技術、文化の振興を担う文部科学省では、「コミュニケーション推進会議」として有識者を交えながら、子どもたちのコミュニケーション能力の育成に向けた具体的な方針について調査や検討を行っております。
国際化が進展していく現代、多様な価値観の中で協力していく事は社会に不可欠です。また子どもたちが自分の感情をうまく表現できない事による社会問題も度々取り上げられております。
そのような時代背景の中で、コミュニケーション推進会議が生まれました。
リスキリング
今後の仕事において必要とされる人材としてのスキルを習得するための学びの事をリスキリングといいます。
ITやDXなど、これまでとは異なるスキルが求められる現代の職場において、新たな人材の雇用のみならず、既存の就業者のキャリアアップ推進も企業の大切な取り組みになってきております。
特に、リーダークラスやマネジメント層に向けて、コミュニケーション能力を高めるための講座などが開かれております。リスキリングの学びのテーマの一つとしてコミュニケーション能力も挙げられます。
まとめ
今回はコミュニケーション能力をテーマにお送りしました。
ビジネスの現場では大切な要素でありますので、実践的なコミュニケーションの方法や組織としての活用方法など、関連したお話を今後もお届けしていきたいと思います。
コミュニケーション能力を鍛え高めることで、より円滑な業務へつなげることができます。ぜひ普段の業務で意識いただければと思います。